重力の虹(トマス・ピンチョン/著、佐藤良明/訳)

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博覧強記のトマス・ピョンチンからの「挑戦状」

百科事典を読むような感じでした。翻訳者・佐藤良明氏[*1]の注釈があり、この「快作」を読みすすめることができました。

トマス・ピョンチンは、アメリカ文化、映画、応用物理学、その他の森羅万象に詳しい。そして驚くべき知的レベルの高さを持っています。読者は、トマス・ピョンチンの筆力や博学さに対して「自分は小さな存在」と感じるでしょう。しかし、屈することなく読みすすめなければなりません。なぜならば、現在世界文学の最高峰にして、ノーベル文学賞候補作家の作品だからです。

冒頭の「自然は消滅を知らず、変換を続けるのみ。過去・現在を通じて、科学が私におしえてくれるすべてのことは、霊的な生が死後も継続するという考えを強めるばかりである。」とは、ナチスのロケット開発者フォン・ブラウン博士[*2]の言葉。

ピョンチンは、自然とは、人知の及ばないもの。対して、科学は、人知が解き明かすもの。しかし、人知が解き明かした科学は、霊的な生=人間―包括的な象徴として自然も含む―を制御し続ける。そう、主張しているのではないでしょうか。フォン・ブラウン博士は、敗戦時に米軍へ投降し、アメリカに渡り、アポロ計画を主導しました。アポロ計画とは、冷戦時代のアメリカとソビエト連邦の主権争いの象徴です。ナチスの先端科学が、結果的にアメリカに加担し、ソビエト連邦の感情を逆なでし、冷戦を助長しました。国家間のいがみ合いは、今も後を絶えません。

ピョンチンは、フォン・ブラウン博士の言葉を借りて、人間と技術の「よりよい未来」を描くのではなく、「科学主導の暴力的な未来」を描こうとしているのかもしれません。

作品は、今から43年前の73年発表。名作がそうであるように、この「重力の虹」のテーマは新しい。しかし、時代を反映し、世界の行く末に警鐘を鳴らしつづけ、ずっと先の未来にも読み続けられる「不朽の名作」となるでしょうね。

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同作家の入門書的な本です。

脚注   [ + ]

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みわちん

miwachin.com管理人。大阪在住のパラレルワーカー。暇を見つけてはネタ探しでいろんなアルバイトを経験してます。現在は大阪にてタクシー運転手として奮闘中。