「八日目の蝉」の原作などで知られる直木賞作家・角田光代の長編小説を映画化。銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした横領事件の顛末を描いた作品。まっとうな人生を歩んでいたはずの主婦が若い男性との出会いをきっかけに運命を狂わせている。
ギブ・アンド・テイクとは何だろうか。
U-NEXTで見放題になってたので観てみました。
原作もドラマ版も見ていない私は梨花と光太が不倫関係になるまでの展開が早すぎて「?」となった。産経新聞のシネマレビューでもこのように書かれている。
ポップなBGMは思わずおしゃれな恋愛映画?と勘違いさせてしまうほどで、その犯罪映画らしからぬ味付けが、良い意味で異彩を放っている。ただ、2人が恋に突き進む動機付けがいささか弱いのでは…。
産経新聞[*1]
しかし、最後まで観てわかったのは、本作は恋愛にスポットをあてた作品ではないという事。だから、それで良いのかもしれない。
ヒロインの梨花は、とにかく「善意のつもりで」与えるのが好きな女性に見受けられた。ただ、それは「見返りを求める」ものである。資本主義としては「何かをあげるときにはお返しがある」のを期待するのは普通だし、報酬に期待が出来ないものに資本を投入なんてしてはいけない。しかし、それが「善意」という皮を被るとどうだろうか?善意への報酬は”してあげたという自己満足”で完結すれば良いのだが、梨花はそうならなかった。与えた相手への「見返り要求」が強くあった。
与えたのに期待通りの反応を返さなかった夫に不満を抱いてしまった梨花。肥大化した見返り欲求がなければ不満も持たず不倫なんてのもしなかったかもしれない。「自分ではたらいたお金で夫にプレゼントを購入した」その自己満足だけで十分なはずなのに、それができなかった。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、この映画はラストシーンを観て「ハッ」と気がつく。そして深く考察したくなる作品でした。
それにしても…押し付けの強い施しというのは人を墜落させるものなのですね。身に覚えがあるだけに、心に突き刺さりました。
映画データ
池松壮亮
大島優子
田辺誠一
小林聡美
原作
脚注
1. | ^ | 出典:産経新聞シネマレビューhttp://www.sankei.com/entertainments/news/141114/ent1411140003-n1.html 2017/01/29閲覧 |