砂漠のような乾燥地帯でも生きられる不思議なカエル 「ウォーターホールディングフロッグ」

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カエルといえば、池や沼、水のあるところに生息するのが一般的ですよね。カエルを触ってみれば分かる通り、ペタッとして水分をたくさん含んでいて、水がなくては生きることができない生き物、というのが共通の認識ではないでしょうか?ところが水がほとんどない場所に生息する珍しいカエルがいるんですって!今回はその蛙について調べて見たのでご紹介したいと思います。

オーストラリアの砂漠のような乾燥地帯に生息する珍しいカエル、Water-holding frog

オーストラリアには多くの乾燥地帯があります。今回紹介する蛙は、オーストラリアの大陸、主に西オーストラリアの乾燥地帯に多く暮らしています。

その名もWater-holding frog (ウォーターホールディングフロッグ)。名前から想像できる通りお水を貯め込む蛙です。英語の学名はCyclorana platycephala。それに基づく和名は、モグリアマガエルです。聞いた事ありますか?

平らな頭に小さな目。いる場所によって体の色を変化させることができるのが特徴です。灰色、深緑、茶色へと、地面の色に応じて体の色を変化させる事ができます。まるでカメレオンのようですね。体長は、オスのウォーターホールディングフロッグで約4.2〜6.4cm、メスは約5.0〜7.2cmと言われています。卵から孵ったおたまじゃくしは、6cmほどまで成長するそうです。

オーストラリアの砂漠のような乾燥地帯に住みつくというこの蛙はBurrowing flogs(ボローウィングフロッグ)というカエルの一種。ボローウィングフロッグは何種類もいるのですが、どの蛙も基本的にある習性を持っているんですよ。

その習性とは、このカエルたちは地面の何メートルも下にもぐり、活動休止状態のまま生きていることができるんです。そして次の雨がやってくるまで、じっと地面の下で待っているんですよ。

体重の50%もの水を溜める事が出来る!

この蛙は膀胱にたくさんの水を溜めておく事ができます。その量もなんと体重の50%くらいまで水を膀胱に溜め込んでおくことができるんです。雨季に水をたくさん飲み、大きくふくれ上がったおなか(正確には膀胱)を抱え、そのままじっとして水分を失わないようにすることができるんですね。また、水をたっぷりと飲むだけでなく、皮膚からもたくさんの水分を吸い取ることができるんですよ。

この蛙の見た目は丸っこいのですが、腕と足がとても短いんです。それに対して胴体はとても大きいです。おそらく手足が長いとそれだけ表面積も増え、失われる水分量も増えるからでしょうね。乾燥したコンディションの中ではすぐに体がパリパリになってしまうため、できるだけ水分を失わないようこの見かけになったのかもしれません。

また、特徴的な短い後ろ足には「シャベルのようなもの」がついています。乾燥の時期がやってくるとこのシャベルのようなものが非常に活躍します。一見すると余分なものにも見えますが、この後ろ足のおかげで、後ろ向きに地面を掘ることが可能になります。乾燥する前に自ら素早く地面にもぐるため、欠かせない装備なんですね。

何年も繭になって夏眠ができる

乾燥時期の間は夏眠と呼ばれる活動休止状態に入ります。仮死状態と言っても良いでしょうね。その時は自らの死んだ皮膚の殻や新しく分泌した膜を使って体をすっぽりと包み込んでしまいます。そうして、皮膚を何層にも分厚くして体から水分が逃げてしまうのを防ぎます。またそうする事によって気温が上昇する中で体温を低く保つこともできるんです。

その見た目はまるでどこかからバッグを持ってきて、それにすっぽりと入ってしまったようにも見えます。このバッグに入った繭のような状態で7年もの間、地面の下で生きることができるんですって。

ウォーターホールディングフロッグにとって繁殖は時間勝負!

乾燥している時期は繭の状態になって活動休止状態になっているウォーターホールディングフロッグ。けれど一人でじっと地面の中にいては、繁殖することは当然できませんよね。

乾燥地帯には、稀に激しい雨、洪水になるような大雨がやってくる事があります。その雨は、ウォーターホールディングフロッグのホルモンシグナルを誘発させ、自然に体を起こすと言われています。

本能的に雨の時期を悟ったウォーターホールディングフロッグは、外へと急いで登っていきます。この雨が長く続くのかすぐに乾燥の時期がまたやってくるのかは彼らにも分からないので急いで生殖しようとします。

うまく生殖できるとメスは、大量の卵を洪水や大雨の後の水たまり、沼のような場所に産みつけます。卵から孵ったおたまじゃくしは驚くほどの速さで成長し瞬く間にカエルになります。乾燥時期がやってくる前に、湿った泥の中、巣穴へと急いで入っていくためですね。そのスピードも驚異的です。孵化、そしておたまじゃくしから蛙へと変態するのに約10日しかありません。乾燥する前にとにかく急いで蛙になる必要があるので驚異的なスピードで変態していくんですね。

ちなみに食べる機会もこの時のみなのでまさに時間勝負です!

アボリジニの水筒がわりになっている!?

ウォーターホールディングフロッグが主に生息する西オーストラリアの乾燥地帯にはオーストラリアの先住民の子孫、アボリジニが存在します。アボリジニとは、オーストラリア大陸と、その周辺の島に住む先住民の子孫。

西洋人がオーストラリアを発見した時点では50万人から100万人もいたとするアボリジニは、1920年には7万人と随分と減少しているようですね。理由には、伝染病やイギリスによる植民地化、多くが虐殺されてしまったという、悲しい事実があります。

他方で、不毛な乾燥地帯である内陸部のアボリジニは、その厳しい自然環境ゆえに、どうにか固有文化を維持し続けました。数は減ったものの内陸の乾燥地帯には今日でもアボリジニは多く残っているそうです。

そのアボリジニにとって、ウォーターホールディングフロッグは生きていくのに便利な存在。昔からアボリジニ達は乾燥時期になるとウォーターホールディングフロッグを巣穴から取り出し、手でぎゅっと絞るようにして、出てくる水を飲んでいたそうな。ちょうど喉が乾いた時に、水筒の水を飲むような感じ。おそらく今も、飲んでいるのではないでしょうか。

ウォーターホールディングフロッグが大量の水を含んで地面にいることをアボリジニは知っています。昔から緊急の飲み水としてウォーターホールディングフロッグを利用してきました。水を飲んだ後は、傷つけることなく元の巣穴に戻しておくといいます。うーん。水分を奪われ地面に戻されたウォーターホールディングフロッグは生きていけるのでしょうか?そのあたりは調べられませんでした。

乾燥地帯で暮らしていくのは、とても厳しいことです。その厳しい環境の中で暮らしていくための適応能力はカエルも人間も面白いですね。

一生を地中で過ごすカエルも存在するらしい?

7年もの間、地面の中にもぐったまま生きていくことができるウォーターホールディングフロッグにも驚きですが、なんとその生涯を一生地中で過ごすカエルもいるんです。

同じ西オーストラリアに生息する、Round frog(ラウンドフロッグ)、 Turtle frog(タートルフロッグ)という種類のカエルは、ほぼ永久的に地面の中で過ごし、シロアリなどを食べて生きているそうです。しかしその生態はあまり多く知られておりません。

地面の下に生息するため、生物学者にとっても研究するのが非常に難しい生物であるんです。なので、その生態についてはよく分からないことが多いんだそうです。

ウォーターホールディングフロッグを含めた地面の下に潜るそれらのカエルが何をして生きているのか、どのくらいの種類があるのか、どのように分配しているのか、あるいはその存在が現在脅かされているのか、全ては闇の中に包まれたままなんだそうです。

けれど、このミステリアスな乾燥地帯のカエルたちが、与えられた環境に応じて、必死で体を適応させてきたのは間違いないでしょう。そして今後もおそらく変化していくであろう厳しい環境の中で、生物の持つ生きる力、適応能力がわかるにつれ、私たちは何度も驚かされることになるかもしれませんね。

参考サイト

砂漠で一番多い死因は溺死!?砂漠に潜む危険な自然現象

2016.10.29